EDUCATION
それは、いじめか、厳しさか。教師の違いを見分ける10の方法。Quincy Cundiff-Kopplin
2020 Feb.29
この記事は、Quincy Cundiff-Kopplin氏によるDANCE MAGAZINE 2018年2月7日への寄稿を日本語訳したものです。
Is Your Teacher A Bully Or Just Strict? 10 Ways to Tell The Difference
何ヶ月か前、あなたは笑顔がわざとらしいと言われ、教師にきつく言われたことがありました。そんなことがあったものだから、今日のあなたはできるだけ表情をニュートラルに保つよう振る舞っています。すると、その教師は音楽をいきなり止め、あなたに向かってつかつかと歩み寄り、おでこをノックするふりをしながら「ちょっと!あなたの頭は、からっぽなの?なんでいつもそんな無表情なの!」。あなただけでなく、クラスメートたちも凍りつき、あなたと教師をおろおろ見ながら、一刻も早く音楽が再開されレッスンが普通に戻ることを望んでいます。
ダンス教師によるいじめは、耐えがたいものです。と同時に、生徒を混乱に陥らせるものでもあります。「何が起きたの?」「私が弱すぎるの?」「これは先生がひどいの?」
いじめを行う教師は、自分たちは「単に厳しいだけ」だと言います。しかしながら、いじめと厳しさのあいだには、明確な違いがあります。厳しさは、生徒を育て上げる。いじめは、生徒を壊してしまう。
「教えるとは、生徒に、能力と技術と知識を授けることです。オープンでリラックスした形で教える教師もいれば、厳格なやり方を好む教師もいます。」心理学者のデボラ・セラーニ氏は言います。「指導する上で、厳しさも効果的ではあります。しかし、それが度を越して、品位を失ったり、人を傷つけるような場合は、もはやそれはいじめと言っていいでしょう。」
殴る蹴るといった肉体的な虐待は、誰がどう見てもおかしいとわかります。しかし、いじめは、必ずしも肉体的なダメージを伴うものだけではありません。ストックホルム大学の社会文化人類学部長のヘレナ・ウルフ氏は、世界中のダンスカルチャーの研究のために教師と生徒のやりとりを数多く観察してきました。彼女は、教室におけるいじめを「否定的な物言いや、小言、叱りつけなどが、特定のある一人の生徒に対して行われる場合」と定義づけています。
あなたの教師たちの振る舞いは、厳しいだけなのか、いじめなのか。以下に掲げるサインが、行き過ぎかどうかを判断する指標になるでしょう。
あなたのためではなく、自分のために振舞う教師
いじめる人間は、何かを得るために他人を傷つけるものです。教師たちに「根性なし」と呼ばれることを恐れ我慢する生徒が増えれば、その授業にお金を払い続ける生徒が増えることになります。怒鳴り散らす振付家は、生徒たちが恐怖のあまり服従し続けるというメリットを得られます。生徒たちに公然と屈辱を与える芸術監督は、自分が権力を握ってるかのような気分になれるというメリットを得るものです。
繰り返し同じ生徒をターゲットにする教師
教師たちも所詮は人間です。時には授業中に切れたりすることもあります。しかし、いじめとは、そうではなく、特定の生徒や生徒たちに対し、支配的になったり、馬鹿にしたり、除け者にしたり、屈辱的なことを行ったり、コントロールしようとしたり、無視したり、騙したりするものです。
規則や対処が、非公式もしくは非合理的な教師
健全に運営されている教室は、規則がきちんと整えられているし、そしてその規則を守らない生徒に対しては、誰もが納得のいく対処がなされるものだ。いじめ教師の場合は、なんとなく気に入らない生徒に対して「馬鹿にする」といった合理的ではない懲らしめ方をしがちなのです。あるいは、みんなの前で罵ったり、無視したりといった、非公式な処罰を与えることもよくあります。
育成のためでなく、攻撃のためだけに叱る教師
テキサス大学のダンス講師であるマイロン・ハワード・ナデル氏は「よい教育とは、励ましと親切心からなる“ケア”のことですが、本来できることをいくら言ってもやらない生徒に対しては、その行いに対して特定の行動に出る場合もあります。」と言います。もし教師が生徒を叱る必要がある場面では、「怒りからではなく、愛情から、賢明に対処しなければなりません。決して教師の気まぐれな自己満足のために叱ることはよくありません。」
あなたを練習から遠ざける教師
いじめ教師の中には、ターゲットとなる生徒に対して、リハーサル時間を減らしたり、指導回数を減らしたり、場合によってはクラスのコンビネーションを仕上げるチャンスを奪う、といった行動を取る者もいます。ダンススキルは当然のことながら練習することによって上達するものであり、生徒を練習から外すという行いは、ダンス教育に対する大きな悪影響です。
教室に他の大人がいる時には、ふだんと違う振る舞いをする教師
厳格なだけの教師は、教室に他の大人がいたとしても、何も隠すようなことはしません。他の大人たちがいるからといって、生徒たちに腹筋をやらせたり、生徒の足を指差したりできない、なんてことはありません。いじめ教師たちは、他の大人たちがいない時に最も虐待的な行動をとることで、いじめの程度を隠そうとする傾向にあります。
要注意:教室を辞めないようプレッシャーをかける教師
いじめ教師から身を守る最も有効な手段は、その教室を辞めることです。辞める生徒に対して「根性なし」で「裏切り者」だなどと脅し、辞めさせないように仕向けることは、確かな教育によってでななく、単に恐怖心から生徒数を維持しているだけに過ぎない。
要注意:あなたが体型や摂食障害に悩んでいる
ダンスにおいて、いじめ問題は、しばしば体型の話と絡んでくる。筋肉のつき方や可動範囲など、本人の身体構造的特徴について教師と生徒が話し合うことはもちろん必要なのですが、体重や食べ方について生徒にプレッシャーを与えることは明らかに不適切です。ナデル氏は「大学の芸術学部の管理職として、女性の生徒に対して体重を減らすよう強いる教師たちに、注意をしなければならない場面が一度ならずありました。それらの生徒のうち何人かは拒食症のカウンセリングを受けていたのです。」
要注意:教師と正面から話し合うことが、事態をさらに悪化させる場合も
あなたがいくら丁寧に正しく向き合ったとしても、自分のやり方が「疑われている」と感じたいじめ教師は、報復に出る可能性があります。だから話さないほうがいい、ということではありません。いじめ教師本人に立ち向かうよりも、他の教師や教室の管理者に話すほうが安全です、ということです。
「もしあなたがいじめられていると感じるなら、他の生徒も同じような行為を受けている可能性があることを、知ってください。」とセラーニ氏は言います。被害について誰かに話すことは、あなたを孤独から救うことになります。いじめ行為について、誰かに話すことが大切です。友達でもいいですし、大切な人にでもいいですし、もちろん教室の管理者でも構いません。
要注意:教室の外でも、不安を感じたり、恥ずかしいと思ったり、いつも「用心」し始める
いじめ教師からすれば、自分たちのやっていることは「現実の社会と同じ」だと主張するかもしれません。しかし彼らは、生徒のプロフェッショナリズムを確実に傷つけているのです。虐待的な教室では、生徒に対し、服従的な態度を取るよう仕立て、外見や能力についての自信を失わせ、いつ怒られるかとおどおどする子にしてしまいます。そして、結果として学校でも、人間関係でも、ダンスのプロ世界でもうまくやっていくことを困難にしてしまうのです。
